当社グループでは、「環境」における重要課題を以下のように決定し、今後の事業活動の中で環境負荷の低減に努めていきます。
①エネルギー消費および温室効果ガスの排出 ②大気への排出③有害物質 ④固形廃棄物 ⑤汚染防止と資源削減 ⑥水の管理⑦生物多様性
現在、世界中で気候変動に伴う異常気象が激甚化しつつあり、自然および人間社会へ深刻な被害をもたらしています。
また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が主導する科学的調査によると、温暖化による世界の平均気温の上昇幅を、産業革命(1850年頃)から2050年までに1.5℃以下に抑えなければ、温暖化が不可逆的、つまり取り返しがつかない結果になるとの衝撃的な結論が導かれつつあります。
当社は、気候変動は人間社会の活動が引き起こしたものであるとの科学的根拠に基づき、この事態を解決することは人、および企業としての使命であると捉えて、国内拠点、国内子会社、海外現地法人のグループ全社で2050年までにカーボンニュートラルを実現すべく取り組んでいきます。
当社は、「気候変動・脱炭素への取り組み」をマテリアリティの一つに位置付け、取り組みを進めています。その一環として、2022年10月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しました。
本項目では、TCFD提言に基づき、気候変動関連の重要情報(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)を開示しています。
当社グループは、持続可能な環境・社会・経済の実現と当社グループの企業価値の向上の両立を目指すため、気候関連を含むサステナビリティ経営の推進における重要事項の決定および取り組みの円滑な推進を目的として、取締役会が直接監督するサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は、取締役(社外取締役を含む)および執行役員の中から取締役会が指名する委員で構成し、代表取締役社長が委員長を務めます。「全体方針の策定」「対処すべき重要事項の決定」「リスクと機会に関する評価」「目標の設定」「行動に関する計画」「行動の検証モニタリング」を役割として、原則4 回/年度の定例委員会を開催し、その内容は取締役会ならびに監査等委員会に報告されます。取締役会は、国際イニシアティブによる提言や国内外の政策等を中心とした社会情勢の動向と、当社グループの事業成長との両立を踏まえて、サステナビリティ委員会が決定した重要事項等についてプロセスを含め確認し監督しています。
注:ガバナンス体制は、コーポレートガバナンス体制図をご覧ください。
当社グループは、2022年5月に公表した「中期経営計画(2022-2025年度)」において「環境負荷低減と事業成長の両立」を重要課題として掲げています。この重要課題を達成するためには、シナリオの分析が必要と捉え、気候変動がもたらすリスクと機会を整理しています。
気候シナリオ分析においては、低炭素・脱炭素社会への移行リスクが高まる1.5℃シナリオと、低炭素・脱炭素が達成されずに気候変動に伴う物理的リスクが高まる4℃シナリオの2つのシナリオを想定し、当社グループにとってのキードライバーの選定、リスクと機会の抽出・評価・特定を行いました。
本分析結果については、関係する役員との意見交換を経てサステナビリティ委員会において評価の妥当性を確認し共有しています。
(シナリオの参考情報)
- 国際エネルギー機関(2021)「世界エネルギー展望2021」
- IPCC(1998)「1.5℃特別報告書」
- IPCC(1999)「土地関係特別報告書」
- 環境省(2021)「令和2年度環境産業の市場規模推計等委託業務 環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」
- 世界資源研究所(WRI)(2019)1「Aqueduct Water Risk Atlas 3.0」
当社グループは、事業および企業経営に重大な影響を与えるリスクの顕在化を特定し、全社リスクとして管理することを目的として、取締役会が直接監督するTRM(トータルリスクマネジメント)委員会を設置しています。TRM委員会は、潜在的なリスクの評価、全社リスクの一元的管理、対応の促進、管理状況のモニタリングなどを実施し、その内容は取締役会ならびに監査等委員会に報告されます。リスク評価の基準は、関連する法規制や国際基準などを参照し、気候変動関連リスクについては、国際エネルギー機関「世界エネルギー展望2021」・IPCC(1998)「1.5 °C特別報告書」などを参照し、事業ごと、展開地域ごとに潜在リスクの発生確率と影響度を評価して優先的に対処すべき全社リスクを特定して事業リスクを総合的に評価し、優先順位の高いリスクへの対応方針を策定しています。気候変動関連リスクについては、2つのシナリオ(1.5 °Cシナリオ、4 °Cシナリオ)を想定し、当社グループにとってのキードライバーの選定、リスクと機会の抽出、評価を行い、サステナビリティ委員会において確認のうえ、リスクを特定し、事業および企業経営にとって重要と認識したリスクを管理する目的でTRM委員会に設置する専門部会において、対応等の促進および進捗のモニタリングを行っています。
当社は、2022年7月に当社グループを対象とする温室効果ガス排出量削減の目標を設定しました。
SBTの1.5℃目標に準じた目標であり、SBTi (Science Based Targets Initiative)により認定を取得しました。
当社グループは、目標の達成に向けて、再生可能エネルギーの活用や製造および処理プロセスの見直しと改善などを通じて事業活動に伴い発生するCO2排出量の削減に取り組むとともに、サプライヤーの皆様への働きかけなど、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減を推進し、持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。
(削減に向けた主な対策)
- エネルギー使用効率の改善
- 再生可能エネルギーの導入拡大
- 製造および処理プロセスの見直し、改善(燃料転換、CO₂回収含む)
- 高効率設備の導入、更新
- 物流効率化・モーダルシフト
- 環境負荷低減製品/サービスの提供
- サプライチェーンとのエンゲージメントを通じた協働
2030年度(短期) |
2050年度(長期) |
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Scope1+2 |
2020年度比 42%削減 |
カーボン ニュートラル実現 |
Scope3 |
2020年度比 25%削減 |


※22年度の排出量実績は、株式会社サステナビリティ会計事務所の第三者保証を取得しています。
2023年9月30日現在
リスクと機会のインパクトは以下のとおりに定義しています。
100万円≦中程度<1,000百万円、1,000百万円≦大
シナリオ |
区分 |
キードライバー |
前提条件 |
当社グループにとっての インプリケーション |
インパクト |
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1.5℃ |
政策・ 法規制 |
カーボンプライシング(炭素税、排出量取引制度など) |
・国や地域における価格の上昇 |
-食品関連事業- ・ 調達コストの増大 ・ 調達先の変更・集約 -貴金属関連事業- ・ 調達コストの増大 ・ 販売競争力の低下 |
リスク |
大 |
CO₂排出量規制の強化(省エネ法の規制強化など) |
・電力へのエネルギー転換促進 ・エネルギー使用の合理化要求 |
-全事業共通- ・ 設備投資の拡大 ・ 技術開発費用の増大 ・ 調達コストの増大 |
リスク |
中 |
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農地開発規制の強化FLAGセクター(森林、土地、農業)の排出規制強化 |
・ 土地利用や転換による温室効果ガスの排出を抑制するため、多くの国で新たな一次産業エリアの開拓制限 ・ 国際貿易によって、最適な場所で生産された林産物、農産物の適切な配分が実現、世界全体の生産効率が向上 ・ 食料品の輸出規制や禁輸 ・ 森林破壊の一因である不正な金属鉱業に対し、植林地の開発及び採鉱事業の環境規制や社会的セーフガードのコンプライアンスが強化 |
–食品関連事業– ・ 供給量・販売量の制限 ・ 売上機会の減少 ・ 調達コストが増加 |
リスク |
大 |
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廃棄物排出の規制強化 |
・ 第4次循環型社会形成基本計画(日本政府)に基づく廃棄物循環利用率の目標拡大 ・ 廃棄物循環利用率向上に向けた技術開発、投資の進展 ・ 欧州を中心にサーキュラーエコノミーの実現に向けた政策強化により、リユース、リサイクル、シェアリングによるクローズドループが多くの産業で形成される |
-貴金属関連事業- ・ 資源リサイクルの需要拡大 |
機会 |
中 |
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技術 |
低炭素技術への移行化( 低排出技術、商品・サービスの開発) |
・ 製品と素材は利用された後、回収、リユース、リサイクルなど永続的価値を提供する循環型のビジネスモデルを反映したものになっていく ・ カーボンニュートラルに向けたバイオ、廃プラ等の脱炭素に資するエネルギー源を利用した非鉄金属リサイクル促進技術の開発が進む |
-食品関連事業- ・ 売上機会の減少 |
リスク |
大 |
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4℃ |
物理的変化 (急性) |
平均気温上昇降雨パターンの変化 |
・世界中で水不足や洪水が頻発し、21世紀末には20世紀末と比較して日本の洪水発生頻度は4倍になる ・ 労働生産性の低下による全労働力の減少(3℃上昇シナリオにおける総労働力の平均減少率は、アジアで25%、南北アメリカで16.7%と予想される) |
-貴金属関連事業- ・ 防災、復旧費用の増加 -全事業共通- ・ 労働生産性の低下を補うための人件費の増加(20%の生産性低下に対し120%増員の必要性) ・ 気温上昇に伴う光熱費の増加 |
リスク |
大 |
海面上昇 |
・ 0.5mの海面上昇により津波ハザードが2倍になる(2030年までに高波の頻度は年間7日~15日、2050年までに25日~75日に増加) ・ 食糧システムについては、ある年に5%を超える穀物収量減少のリスクは、2050年までにアジアでは現在の1.4倍、世界では1.9倍になる ・ アジアにおいては2050年までにバイオーム(生物群)の移動が予想される土地面積の割合は40%である(グローバルでは45%) |
-全事業共通- ・ 防災、復旧費用の増加 ・ 顧客拠点の移転 -食品関連事業- ・ 農地の減少、生息域確保の困難化 ・ 農作物の収量減少、食糧資源確保の困難化 ・ 売上減少 |
リスク |
大 |
注:分析の結果、「小」と判断したインパクトについては、影響が軽微であるため、省略しています。
TCFDのリスクと機会のインパクトは、2023年7月に見直しを行っています。